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僕の高校は小高い丘の上にあった。毎日、坂道を生徒だけが行き来するだけなのと、周りに残された雑木林が生い茂っているせいもあって昼でも静な場所だ。静かすぎて、麓の街から高校までの雑木林は沈黙の森と呼ばれて怖がられていた。生徒たちは夕方以降は一人では帰りたがらない。だけど、僕はいつも一人でこの静かな坂道を帰る。
学校に友達はいた。でも彼らの顔も、毎日のどうでもいい会話も記憶に残っていない程度の存在だ。学校が嫌いというわけでもないんだけど、僕は毎日がどうにも虚しかった。他のみんなはどうもそうは思わないらしい。
まだ小学生の頃にゲーム用のカードを集めるのが学校で流行っていた。周りのクラスメートが夢中になって遊んでいても、何がそんなに面白いのかどうしても理解できなっかった。だけど、僕も小学生なりのつき合いとして、友達に誘われればカードを一緒に買いに行った。ゲームの勝ち負けには興味がなかったが、お気に入りのカードが手に入ることだけは楽しかった。欲しいカードがあれば、どんな手段を使っても手に入れたくなったものだった。
空からは明るい光がさしている。今日は満月だ。風が強いせいで満月は雲に隠れては出てを繰り返していた。月が雲に隠れると辺りは一気に真っ暗になった。
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