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あの集めたカードはどこにしまってあるんだろうか。捨てたか、まだどこかにしまってあるのか、もう思い出せない。欲しかったカードを手に入れても、嬉しいのはしばらくだけだった事を僕は思い出した。どんな貴重なカードでも、結局はただの紙でしかない。でも、また欲しいカードが現れると、どうしてもそれが欲しくてしょうがなくなるのだ。
僕の毎日も小学生からのカード集めやゲームがずっと続いているようのものだ。試験での良い成績、クラスの中での良いポジション、他人への良い印象。それを手に入れるために、僕は必死に手を尽くす。だけど、手に入ってみればあとは仕舞っておくか、捨てるしかない。
「こんにちは」
声がした。あの少女だった。
月が雲の間から出てきて、少女の顔をはっきりと照らした。彼女の顔はやっぱり美しかった。気のせいか彼女は少し微笑んでいる。月を背景に笑う彼女はこの世に実在するには、美しすぎた。これは夢じゃないんだろうか。
「君はさっきの。友達には会えた?」
「いいえ、会えませんでした」
彼女は首を横にふった。
「駅に行くんだけど、一緒にどうですか?」
彼女は頷いた。
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