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しかし、そんな幸せは長くない。彼はとある家のパーティーで、その人と出会ったという。その人からは、特別甘い香りが漂い、彼とその人は何年も前から付き合っている恋人のように自然と口付けを交わした。
そして、当然の流れで体を重ね、情事は明け方まで続いたそうだ。俺とのセックスでは感じなかった熱を、その人とのセックスでは嫌でもわかるほど感じたのだと。
これが、「運命の番」なのだと。
その人の母親はアルファで世界的に有名なデザイナーだった。その人を自分の両親に報告した彼とその人は皆に祝福され、幸せそうだった。
そして俺は、まだしばらくその屋敷でメイドとして働いた。天涯孤独で、ここをやめても帰る場所がないからだ。
ここにいれば、ご飯も寝る場所もあったから、居心地が良かった。
ある日、彼とその人に今日のアフタヌーンティーを出すべく、彼の部屋に行った。
扉をノックしようとしたとき、声が聞こえた。普通の声じゃない。何かを堪えるような、でも、快感が混じった声。
嫌でもわかった。セックスしていると。
扉の前で固まってしまい、余計に扉の向こうの声が聞こえてきた。
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