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ステがそっと手を握ってきた。
その指先を握りかえし、涙をぬぐう。
私はぼんやりとお母さんを想って、それから生命の不思議を思う。
死にゆく命と引き換えに、生まれくる命がある。
脈々と繋がっていく血の連鎖。
次第に膨らみはじめ、丸みをおびてきた自分の腹部に手を添えた。
墓標のまわりに生い茂る草の中で、白い花弁が揺れていた。
まだ、風が吹いてる。
〝そろそろ行かない? 風が体に障るといけない〟
ステがいたわるように私の肩を抱いた。
触れる手のぬくもりを通し、言葉を伝えてくる。
ステの体はあたたかかったけれど、それでも涙はとまらなかった。
いつまでも吹きやまない風が、たたずむステと私を見守るように、静かに、どこからともなく、ずっと絶え間なく……。
******
【完】
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