第5章 関東管領

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 景虎は早速春日山城に諸将を集めた。 「皆の者、去る22日里見義堯殿が三乗殿を通じて援を請うてきた。又、佐竹殿や結城殿も余の出陣を願っておると聞きおよぶ。先年上洛し将軍公よりのご沙汰は頂戴しており、関東出陣は願ってもない好機である。この上は八幡大菩薩の社前にて関東管領を拝領し、北条を蹴散らしてくれよう。皆は軍役に備え、普請の勤めを怠りなくいたすように勤めよ」 「ははっ!」 「藤資、今度の出陣の規模は、いか程となろう」 中条藤資は身体を景虎の方に向け、一礼しながら言った。 「旗本衆より騎馬200、鑓1200、弓200を含めおよそ3千、諸将より騎馬500、鑓3千、弓300、手明700を含めおよそ5千、小荷駄を含めおよそ1万程になるかと」 「うむ、その当りとなろう。国内の首尾も考えねばなるまい。特に信濃の国境と越中の動きには気をつけねばなるまい。さて、出陣の日取りであるが」 「ご領内の様子と吉凶をみますれば、8月の末、25、6日あたりが妥当かと思われますが」  本庄繁長がゆっくりとした口調で言った。 「うむ」 「お館様」 「何か、朝信」 「こたびの関東出陣は、坂東の豪族どもに要請されてのこと。北条と一戦することとなりましょうが、多分北条は小田原に篭城して成り行きを見守るでありましょう。坂東の将も上杉に心を許すものばかりとは限りますまい。又、関東管領ともなれば、命狙う者多しと思わねばなりますまい。関東での長居は無用と存知ます」 「そなたの言い分わからぬでもない。しかし、将軍公より関東のことゆめゆめよろしく頼むと託されたのだ。尻尾を振って逃げ帰るわけにはいかぬのだ。余は義に反する輩は好まぬ。そのために毘沙門天になりかわり非道の輩を誅さんものである。そのような輩は唐天竺までも追いかけて懲らしめて遣わすのが余の勤めと思うておる」 「しかし、お館様!」 「余はただ昔日に様な平安な時代にしだいだけじゃ。それを乱す輩は、断じて許さぬ」 「ならば、お館様。是非やりましょうぞ、北条を懲らしめに参りましょう」
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