パンデミック

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 今はまだ外で元気に騒ぎまくってるあいつ等も、その内めっきり静かになるだろう。  この隔離措置だって、いつまでも持ちやしない。  なんせ物理法則をガン無視だもん。すぐにも世界に広まるさ。  これぞ自然淘汰ってヤツだ。  ブラックユーモア大好きな神様、ホントありがとう。  「愛こそ我が人生」――  そんな事を宣(のたま)ふ連中を一掃してくれてホントありがとう。  愛だの恋だのを謳(うた)う――  娯楽も芸術も、  音楽も小説も、  それらを押し付けてくる連中を排除してくれてホントありがとう!  なになに?   人は外見じゃない?  はっはっはっ――  馬鹿じゃないの?    人は見た目が十割だろうに。  見た目が悪けりゃ、その中身を知ろうとだってするもんか。  そこらの道端に落ちてる犬のフンの中身を検(あらた)めようとする人間がいる?  ――いないんだよなあ。  糞は糞なの。  俺はウンコなの。  だから生き残れるの。  神様、ほんっとありがとおーっ!!!!!  19を迎えたその日に、飛び出すように家を出て東京に来た。  それから、一年と一ヶ月。  まさかこんなサプライズがあろうとは夢にも思わなかった。  あそこが嫌で、自分を変えたくて、こっちに出てきた。  でも結局、こっちでもあそこでも俺はウンコ人間な訳だ。    ウンコが必死に努力しようが、人からは嫌悪の眼差ししかもらえない。  こっちじゃ向こうより、それがオブラートなだけって話。  そんな、全部を諦めようかと思い始めた折の――  この神の御業。  奇跡。    いやあ、人生捨てたもんじゃない。  神様、あなたの意志に従い、俺はこの世界で唯一の人類として元気にやっていきますね。
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