パンデミック

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   さあさあ、そうなると準備が忙しいぞ。  まだ外では”旧”人類どもが蔓延(はびこ)ってるから危ない。  けれど、あのパンデミックからもう1週間となる。  そろそろ部屋の備蓄の食料やらが底を尽きてしまう。  折角の神様の思し召しを、餓死なんて結末で汚しちゃイカンよね。  うーん、食料調達をどうするかだなあ。  というか、さっさと”旧”人類どもは滅べよな。  未来の世代たる俺に、道を開けろってば。  あ、そういや――  ふと思い出したけど、一月前に実家から送られてきたダンボール箱、まだ確か開けてなかった気がする。  押入れの奥を探ると、やっぱりあった。  家出同然に出奔してからこっち、どうやって調べたのか毎月のように荷物が送られてくる。  まるでそれが義務だと言わんばかりの厚かましさで。  多くは食料品とかだ。  連絡すらする気はないし、向こうからだって来ない。  けど、どうやらそれで情け深い親を示してるつもりらしい。  そんな母親の自己満足に仕様がなく付き合ってる。    ほんと、笑わせてくれる話だよ。  俺が何でこんな苦労をしてるか知ってる?  ――お前の遺伝子と、貧乏に育てたその環境のせいだよクソババア。    ……いやまあ、しかしだ。  あのクソババアが俺をこれだけの不細工に生んでくれたお陰で、俺は未来の担い手になれた訳だよな。  感謝しなくちゃか。  ダンボールの封を開けてみると、日持ちする野菜類や乾物等がびっしり入ってた。  今の状況じゃあ、ナイスなチョイスだな。  そこは褒めよう。  すると、それらに埋もれるような分厚い白封筒が一通。  なんだこれ?  手紙?  ――ふん。  飛び出してからこっち、住所は知ってるだろうに連絡の一つも寄越さなかったクセに。  というか、この厚みはオカシイだろ。  側面を底にして立つぞ。  どういう分量だよ。  独り働きでろくな暇もない分際で。  時間は別の事でもっと有意義に使えっての。      
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