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明くる日――
俺は神様の思し召しを無駄にした。
高熱にうなされ、自分はもうこれで最後だと悟った。
けれど不思議と、
死ぬ事への恐怖はあんまりなかった。
むしろ、どこか満ち足りていたのかもしれない。
視界がぼやけ、頭がぐわんぐわんと揺れ回る。
敷いた布団の上、
枕元には、こんな世界じゃ役に立たなくなった分厚い紙束がある。
俺は……
本当は知っていた。
この世界で呼吸を始めた、その瞬間――
他でもない――
安堵と喜びと、
そして幸せを一心に噛み締めるよう、
微笑んでくれたそのヒトの事を。
でなきゃ、今こうして、自分の馬鹿さ加減に呆れ返る事もできない……。
――そうして、
何度も読み返した”一枚”の手紙を握りながら、
うわ言のように呟く言葉。
「母ちゃん……ゴメンよ……」
【END】
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