11人が本棚に入れています
本棚に追加
家の最寄り駅で貴俊が待っていた。
「この前はごめん。優里の顔が凄く好きなのは事実だし、男だからHなことを考えているのも事実だ。でも、優しくて裏表がない優里のことが好きなんだ。トロでおかしな気持ちばかりが露出しちゃったみたいだけど、キミを好きな気持ちだって本当だよ」
それはずっと優里が好きだった貴俊だった。あれがトロのせいだったなら、もう一度信じることが出来るかもしれない。
「それ、本当?貴ちゃん」
優里が瞳を潤ませながら貴俊を見ると、それを愛しそうに見つめて「そういう表情はマジで可愛いよな」と貴俊が笑った。
次の瞬間、また堰を切ったように早口で話し始めた。
「けどさ、貴ちゃんって呼ぶなよ。俺は男らしい男なんだ。ちゃん付けは似合わない。ほんっとに優里ってちょろいよな。ちょっと優しい言葉を掛けるとすぐに騙されるんだ」
「貴ちゃんも、まだトロなのね・・・」
「いや、こんな本音は言いたくなくて、また優里と街を歩いて注目を浴びたいんだ!・・・いや、キミが好きだ!!と嘘でも言って、他の彼女が出来るまで繋ぎ止めておきたい」
うんざりした優里は貴俊の手を振り払って電車に乗った。目の前で扉が閉まって駅に取り残された貴俊は、何か大声で優里の悪口を叫んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!