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「おはよう、優里」
校門を通ったところで肩を叩かれた。振り向くと、都がバツが悪そうに立っていた。
「この前は、本当にごめんね!トロのせいで黙っていられなくて・・・」
申し訳なさそうにそう言いながら、都は頭を掻いた。
「うん。都はあの時はトロだったから話しちゃっただけだもんね。別に私のことを悪くは言わなかったし、都のことは友達だと思っているよ」
「ありがとう、優里。もう暴露したりしないから」
「うん・・・。あのね、都。お母さんも貴ちゃんも、またトロになっちゃったみたいなの」
やっぱり、いつも相談していた都の存在は大きくて、優里は仲たがいにならなくて良かったと思っていた。
「お母さんって、トロに掛かって何かショックなこと言われたの?」
いつもの優里を心配する優しい都の瞳がそこにあった。
「あのね、誰にも言わないでね。うちのお母さん、浮気していたの」
すると都は急に早口で話し出した。
「実はね、今まで相談受けていたことを黙っていたことは無いの。私、本当に話を心の中に留めておくのが苦手で」
それを聞いた優里が青くなっていると、教室のドアを開けて「みんな、聞いて!優里のお母さんって浮気していたんだって!!と都が大きな声を出した。
振り向いたクラスメイト達が口々に早口で喋りだした。
「優里のお母さんって、すっげえ美人だもんな」
「ええっ?私の母親だったら流石に引くわ」
「けど、あんたのお母さんも若い男と浮気しているよ」
「そうだ、浮気って言えば3組の雄太が3股だったんだよな?」
クラスメイト達の大声の暴露大会に耳を塞ぎながら、優里はそのまま教室を飛び出した。
「やっぱり、テラは私には理想郷だったのかもしれない」
そう思った優里は土手まで走った。そして日が暮れるまで待っていたけれど、ナチと会うことはなかった。
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