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「大丈夫ですか?」 目の前に座る男が、心配気な声音で問い掛けてくる。 ダークグレーのスーツを身に纏ったその男は、歳は25.6だろうか。 黒い髪はオールバック。 銀縁の眼鏡の奥に見える眼は切れ長で、酷薄そうな唇と相まって、酷く冷たい印象を受けた。 クールで知的。そして、イケメン。裏表はかなりありそうなイケメンは、私の苦手とする人種だ。 「大丈夫です」 かなり無理して笑っておいた。男も分かっているのかそんな私に苦笑した。 ーー10日前に、両親を事故で亡くした。 受け入れられないまま葬儀が終わり、父と母の遺骨の前で放心していた私を、目の前の男は攫うように連れ出し、ここまで連れてきた。 『北城法律事務所』 扉を開き、私をソファに座らせると冒頭の言葉を投げかけてきた。 「弁護士の先生だったんですね」 胸元にあるバッチを見ながら呟いた。 「ええ。・・・最初にお伝えした筈ですが。なんだと思っていたんですか?」 何って・・・・・そりゃ 「・・・人攫い?」 「人攫いって・・・酷いですね」 さほど酷いとは思ってなさそうに見えるんだけど・・・その人は飄々として、掴みどころがなかった。 「あまりにも手際が良かったので」 私がそう言えば「そんなふうに言われると照れますね」と、何故かはにかみながら答えた。
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