ヘム達の黄昏

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「鼻水びろーん!」 そんな奇声と共に、かつて親父と呼んでいた人が母さんを強襲する。 その直後だった。 母さんは、その粘膜を喉に詰まらせ動かなくなる。 (くそ、遅かったか!) 俺は怒りと悲しみに震えながら、右手に持っていた金属バットを、親父と呼んでいたヘム感染者の頭部目掛けて、勢い良く振り下ろした。 そして、動かなくなったヘム感染者を踏みつけて、俺は家から逃げしたのである。 外はテレビで見た通り、あちらこちらにヘム感染者が徘徊していた。 後から父を殺した罪悪感と、父と母を失った悲しみが込み上げてきたが、悠長に悲しんでいる暇はなく、俺は取り敢えず人気の無い廃ビルに逃げ込んだのである。 そして、朝になるなり俺は外の様子を確認するべく、廃ビルから出たのだが……。 予想以上に最悪の状態であった。 正直、何かしらの対応がなされている事を少しは期待していたのだが、警察や自衛隊が動いている様子は窺えない。 しかも、逃げ惑う人々が次々とヘム感染していく始末。
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