ヘム達の黄昏

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(くそっ――! 何なんだよ、これは――!?) 周囲を見渡すが、ヘム感染者ばかり。 どう考えても安全とは程遠い――。 「どけ、糞ガキ――!!」 「痛ッ――!? なんて乱暴な……?」 腹の出たオッサンが、荒々しく鼻息を鳴らしながら、俺を撥ね飛ばしバタバタと走り去る。 だが、その直後、悲鳴が鳴り響く。 「ひっ、ひぃ~、くるな……来るな~!??」 さっきのムカつくオッサンの声だ。 (あっちにもヘムが居るかよ――!?) その一件により俺は悟った。 もう日本に、安全な場所は無いのだと…。 これはきっと報いなのだろう、ヘム感染を侮っていた俺達への――。 誰もが、ヘム感染を甘く考えていたのだから。 感染者と遭遇してもゾンビみたいに、噛みついてきたり喰われる訳ではないし、ただ変態行為に勤しんで俺達を笑わせるだけだ。 何より、二メートル範囲に近付かなければ襲われないし、ほっとけば数年後には政府の御抱え研究機関が、ワクチンを開発して全てが元通り――。
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