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3
その女性は突然やって来た。一目で分かる異様な姿。最初に見た時は刺青かと思ったが違った。顔や首、手や腕、足首に至るまで黒い線が縦に等間隔で走っている。服を着たシマウマのように見えた。
「ようこそ、ようこそ」
龍門は相好を崩し、その女性のために診察室にある椅子を引いた。女性は戸惑いながらそこへ座った。
「バンビちゃん、お茶、お願いね。あ、何がいいですか? 緑茶や烏龍茶はもちろんコーヒー、紅茶、ハーブティー、青汁もありますよ」
「……じゃあ、ミルクティーで」
「バンビちゃーん、聞こえた?」
誉は「はい」と返事をする。ミルクたっぷりの紅茶を淹れ、女性の目の前に出した。女性はすみませんと呟いた。
「三十六歳、女性、子育ての過労でよく眠れず時々、死にたくなる……と。分かりました。お話を聞きましょうか」
龍門は開いていたパソコンをそこで閉じた。
女性はしばらくの間黙っていたが、一言話し始めると後は流れ出るように言葉が出た。
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