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親子が帰った後、誉は椅子に貼りつけた赤いテープを剥がした。
「本当に面白いですね。テープ一つでルールが理解できる」
「もちろん子どもによるが、ああいう子たちは視覚優位だから、ここからここまでと区切りをはっきりさせる事で、できる事が増えたりするんだ。集中もしやすくなる」
龍門は何かを思い出したように笑った。
「なんですか?」
「いや、バンビちゃんは気づいたかなって思って」
診察室にある本棚の前まで呼ばれる。龍門は本棚を指差した。
「これ見て何か感じない?」
今日は診察終わりに突然、パニックを起こし、部屋を走り回った挙句、本棚の本を全部床に放り投げたのだ。龍門が片付けるまで部屋から出さないと説明すると男の子は投げた本を棚に戻した。その本棚をじっと眺めてみる。
「――これは、凄い……ですね」
日本精神神経科学会とタイトルが書かれた学会誌がナンバーワンからきちんと番号順に並んでいた。他の本も元あった位置に寸分違わず置かれている。
「何も見ずに無茶苦茶に入れているように見えましたが……」
「うん。あの子は数字が大好きなんだよ」
「数字が……ですか?」
「うん。今度、来た時、一緒に遊んでみようと思う」
意味は分からなかったが誉は頷いた。
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