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その日は朝から雨が降っていた。
親子が診察室にやって来た。男の子は慣れた様子で椅子に座った。龍門に与えられたミルクパズルを始める。絵のない真っ白なピースを合わせ、あっという間に完成させてしまった。手に一つも迷いがなかった。
龍門は母親から電車の写真を見せてもらい、何かを理解したように頷いた。母親は不安そうな表情で首を捻っている。
「ちょっとの間、お母さんは部屋の奥に移動してもらってもいいかな?」
「分かりました」
龍門からの提案で母親を一度、診察室から出した。誉は少し離れた位置で二人を眺めた。
龍門は自作したカードのようなものを机の上に出した。カードの表面には数字が書かれている。0から9までのカードを男の子の目の前に並べた。各数字につき、それぞれ十枚以上が用意されているようだった。
「あはは。やっぱりそうか」
龍門は笑っている。
男の子は数字の1を選ぶとそれを自分の前に並べ始めた。なんだか嬉しそうだ。体を前後に揺らしている。
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