第1話 「落書きの秘密」

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「とりあえず座りましょうか?」  龍門は診察室にある椅子に二人を座らせた。対面に龍門が腰を下ろす。誉は少し離れた場所からその様子を眺めた。 「今日、見せて頂いた電車の写真、もう一度、拝見してもいいですか?」 「あ……はい」  母親は鞄の中からスマホを取り出した。 「これですけど」  母親は画像を表示させると画面を龍門の方へ向けた。 「これが一哉君が乗らなかった電車の写真、そしてこちらが一哉君が乗った電車の写真。違いが分かりますか?」  龍門は母親に尋ねた。母親が首を振る。 「私には同じに見えます。違いは分かりません」 「これならどうですか?」  龍門はスマホの画面を指でピンチアウトした。 「これは……」 「電車の車体番号です。片仮名の文字の後に書かれている数字を見て下さい」 「……はい」  母親は画像をスワイプした。 「クハの後の数字が違います」 「そうです。それが全ての答えです」 「全ての……答え」 「はい」
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