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「それだけじゃないですよ。一哉君にとって数字は言葉なんです」
「言葉?」
「はい」
「一哉君は数字の中で1が一番好きなようです。そしてこれは彼のメッセージでもあるんです」
龍門が数字は言葉と言うと男の子はまたあの台詞を喋り始めた。
「――1は唯一無二のフェ、アで美しい始ま、りの数字です」
体を揺らしながら何度も言葉を続ける。母親は息を呑んだ。
「一哉君は私たちの言葉でこう言っています」
龍門は母親の顔を見た。
「お母さんは世界でただ一人の美しいお母さん。そんなお母さんが僕は大好きだと――」
龍門がそう言うと母親の目から大粒の涙が落ちた。
それは落書きがされた写真の上にぽとりと落ちた。
(了)
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