第1話 「落書きの秘密」

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「それだけじゃないですよ。一哉君にとって数字は言葉なんです」 「言葉?」 「はい」 「一哉君は数字の中で1が一番好きなようです。そしてこれは彼のメッセージでもあるんです」  龍門が数字は言葉と言うと男の子はまたあの台詞を喋り始めた。 「――1は唯一無二のフェ、アで美しい始ま、りの数字です」  体を揺らしながら何度も言葉を続ける。母親は息を呑んだ。 「一哉君は私たちの言葉でこう言っています」  龍門は母親の顔を見た。 「お母さんは世界でただ一人の美しいお母さん。そんなお母さんが僕は大好きだと――」  龍門がそう言うと母親の目から大粒の涙が落ちた。  それは落書きがされた写真の上にぽとりと落ちた。 (了)
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