第2話 「地下アイドルの憂鬱」

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 くだらない話を続けているとコンビニの明るい光が目に入った。龍門が買い物をしたいと言うので誉もそれに付き合う。傘の水滴を落として店の中に入った。 「今日は何を食べようかなぁ」 「食事はいつもコンビニですか?」 「そうだけど」  龍門は菓子パンや弁当が並んでいるコーナーに迷わず歩いていく。食事はちゃんと取った方がいいのにと思いつつ、龍門はれっきとした大人なのだから誉が心配してやる必要はないのだと自分に言い聞かせる。なにせ、自由な男だ。看護師である誉の言う事を聞くとは思えない。 「あー、お腹減ったなぁ」  龍門がパンのコーナーに立つと一人の少女の姿が目に入った。  色白で目が大きい、アイドルのような顔立ちの美少女だ。手足が棒のように細く、今にも折れそうで心配になる。けれど、顔は丸くふっくらとしていて健康そうだった。体が細いせいか頭がやたらと大きく見える。錯覚かなとも思ったが少しだけ違和感を覚えた。  少女は何か思いつめたような顔をして菓子パンの表示を見ている。しばらくするとそれをトートバックの中に入れようとした。  ――あ……万引きだ。  誉は注意しようと足を一歩踏み出したが、それより前に龍門が彼女に近づいていた。少女の肩を叩く。龍門に叩かれた少女はビクッと体を竦ませて、その場から動かなくなった。下を向いて項垂れている。 「今すぐにそれを棚へ戻しなさい」 「…………」  よく見ると彼女のトートバッグは異様に膨らんでいた。盗んだのは一つではないようだった。 「大丈夫。俺は君の力になれると思うよ」  龍門がそう言うと少女はゆっくりと顔を上げた。
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