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「これあげるから。一度、うちにおいで。合言葉は『ようこそ、ドラゴンゲートへ!』だから。覚えておいてね」
「……あ、あんた、何? 刑事じゃないの?」
龍門の事を私服刑事だと思ったのだろうか。彼女は震えながら龍門が差し出した名刺を見た。
「……広陵台総合医療センター……精神・神経科医、龍門文秀」
「そう」
「あんた医者なの?」
「うん。そうだよ」
「君に必要なのは警察官じゃなくて精神科医だ。意味分かるよね?」
「…………」
龍門はトートバッグの中身を覗いた。
「買い物かごの中に入っているのはカロリーがゼロの飲み物、ゼリー、サラダ、ふえるワカメ、煮干し、ノンシュガーのガム。それなのに君が盗もうとしたのは、メロンパンにカレーパン、ドーナツにシュークリーム……カロリーの高いものばかりだ」
龍門の指摘に、少女は下を向いて唇を噛み締めた。
「手脚は折れそうに細いのに、顔はパンパン。一見、健康そうに見えるけど、軽い貧血を起こしてる。耳の下と顎の下にある四つの耳下腺は硬く腫れ上がってもう限界だ。可哀相に。俺の所においでよ」
彼女は下を向いたまま返事をしない。自分の靴先に視線を落として、じっとしている。
「待ってるからね。あっちの丘の上にあるおっきい病院だよ。分かった?」
龍門は病院のある方向を指差すと、渡した名刺をもう一度、彼女に握らせた。彼女は肩を震わせながら手の中の名刺に視線を落とした。
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