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「勝手な事、しないでくれる? 医者の言う事なんか何があっても聞かないから」
「いいねえ、素直で凄くいい。本音で話しているのが分かる」
「なんなの、マジでむかつく」
「ふふ」
「診察室でお茶なんか出さないでよ。何入れられるか分かったもんじゃないから!」
美咲は大きく溜息をつくと、やれやれという様子で椅子を直し、そこへ腰を下ろした。
部屋に静寂が戻る。
龍門は全て分かった顔でパソコンに入力を終えると、それをそっと閉じた。
「君は摂食障害を抱えているね」
「…………」
「それも十年クラスのベテラン選手だ。色々、手慣れている」
龍門の言った言葉に誉は驚いた。
摂食障害とは主に拒食症や過食症の事だ。若い十代の少女に発症しやすく、親子や友人、恋人など、人間関係の問題から来る心理的なストレスが病気の原因だと考えられている。厚生労働省の難治性疾患にも指定されており、治療は困難と言われている。
彼女がそうなのか。
極端に太っているわけでもガリガリに痩せているわけでもない。一見して問題を抱えているようには誉には思えなかった。
「あれだけの量を万引きしてるんだから拒食ではないね。太ってもいない。命の危機があるような痩せ方もしていない。過食をしていて耳下腺が腫れている。そこが腫れるのは唾液の分泌量がハンパないから。つまり君は過食嘔吐型の摂食障害を抱えている」
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