【壱】

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ざわめき立つ教室をよそに、要は慣れた手付きで帰り支度を始めた いつも要の帰り仕度は早い。HRが無いこの学校では授業が終わると同時にとっとと帰り支度を始め教室を出る。 幼い頃からの決まりで ”夜になるまでには必ず帰る事、絶対に目立つ事はしないこと” 夜になれば妖の力が増す そうなればまだ人間と変わらない要みたいな妖は危険が増える 極端に数は減ったと言っても妖はまだまだ沢山存在している けれど、自分達を守るためなら手段を選ばない奴も多い、特に人間を嫌う妖は多い それが無くても人間とはあまり関わりたくないと要は思う 人間は自分勝手に産み出した妖を都合の悪い時用の道具としか思っていない いつもの様に淡々と鞄の中に教科書を詰めていると、制服のポケットに入れてある携帯がブブッと震えた 「あ、まずいな…」 入っていたメールを確認すると、送り主は中等部に通う同じ妖の美桜(みお)だった。 美桜は猫の妖怪で、一度だけ本来の姿を見たことがある。 要と同様に赤ん坊の時に両親を亡くして一緒に暮らしているので、妹の様なものでもある。 届いていたメールを開くと文面は「まだなの!?」とだけ送られてきていた 文面だけで充分な程、怒りが伝わってくる 返事を返すより早く教室を出た方がいいと考えた要は、鞄を肩にかけて席を立とうとしたその瞬間… 「要くん」 そういきなり声をかけられて立ち上がれなくなってしまった ふと黒板の曜日が金曜日と書かれているのが目に入って嫌な予感が要の頭を駆け巡る 「これから遊びに行くんだけど、要くんもどう?」 的中した予感に「げっ」と思わず言いかけて要は慌てて笑顔で取り繕う 「すみません佐々木さん、家の仕事を手伝わないといけないので」 「また?たまにはいいじゃない、お家に連絡してみたら案外許してもらえるかもよ?」 クラスメートの女子の佐々木は要に興味があるのか、そっけなくされても、めげずにこうして誘ってくる さすがに何度も断り続けただけあって今日の佐々木はなかなか引き下がらない。 要は小学校に入学する前から人と極力関わらないように壁を作っている為、外では敬語で話をして、念には念をと目立たないように伊達眼鏡までかけている。 でも要の願いも虚しく、いつも誰か彼か無駄に要と交流を持ちたがろうとする 人間の女はお節介が多いのか?と要が疑問に思うことすらある
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