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「ま、そんな演技はいいから。それより梶浦君さぁ。なんでそんなに弓枝に構うわけ?」  私が口を開くよりも先に、郁恵がニコニコとした笑顔を貼り付けて質問した。 「好きな人を口説いて何が悪いの?」  こちらもまた、にっこりと極上スマイルを決めている。  見つめ合う二人の瞳の奥は、決して笑ってはいない。  互いに腹を探り合うような視線を絡ませていた。  確かに、何故、このモテ男が自分にここまで拘るのかが分からない。  その答えを得る為にも、ここはひとつ、郁恵に任せることにした。 「好きな人ねぇ……梶浦君、別に弓枝のこと好きでも何でもないでしょ? ただ、あからさまに自分には興味を持たない女が珍しくて、執着しているだけでしょ?」  回りくどいことが嫌いな郁恵は、歯に衣着せぬ物言いで、ドストレートにツッコんだ。  眉をピクリと動かし、持っていた茶碗を置いた梶浦は、口元に手をやり、クックッと喉の奥で笑った。 「うん。瑞浪ちゃんに恋愛感情なんてありませんよ」  全く否定しないその潔さは、ある意味惚れ惚れする。  これから、どんなクズ発言が飛び出してくるのかが見ものだ。 「でも、俺に興味がない女性と言ったら、吉本さん。貴女だってそうですよね?」 「あら私は、イケメンだったら何でも頂くわよ」  郁恵の言葉に対し、一部、異を唱えた梶浦だが、それも上手くやり込められ、一瞬、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔を見せた彼は、直ぐに吹き出した。 「ふはっ。意外と肉食系だったんですね」 「あら。見た目からしてそうでしょ?」  本人が言う通り。  彼女は自他共に認めるナイスバディで派手目な外見をしている。  そんな彼女に、「いやいや。こういう女性の方が、実は一途で純粋なんですよ」なんて言葉をサラリと投げかける梶浦はやはり、百戦錬磨。  女をよく知っている。
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