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 繊細な間接照明で照度を落とした室内は、窓から差し込む夜景の光と混ざり合い、どこか幻想的な雰囲気を醸し出している。  枕も布団カバーまでもがいかにも高級そうなキングサイズのベッドの上では、無駄な肉のついていない均整のとれた体をした男が、全裸で座っていた。  その背後には、慈しむように男を見つめ、時折、「あうっ」「うふぅ……」と眉根を寄せ、喘ぎ声を漏らす男を抱きしめるかのようにして、慣れた手つきで麻縄を操る瑞浪の姿があった。  椅子に縛り付けられ、口にはギャグボールを加えさせられた梶浦は、舞台をかぶりつきで見るような位置でその行為を強制的に見せつけられていた。 (なんで俺が、こんな変態カップルのSMプレイなんて見なくちゃなんねぇんだよ)  悪態をつく心とは裏腹に、目は二人に釘付けとなっていた。  体は固定されていても、目の自由は奪われてはいない。  目を背けたり、瞼を瞑ることは出来る筈なのに、梶浦は目の前で繰り広げられている妖艶な光景に目が離せなくなっていた。  彼女はパートナーである男――本郷とは違い、服を脱いではいない。  女性の裸を見て興奮するのは分かるが、自分が目にしているのは、全裸の男が、後ろで両手を組まされ、上半身の自由が利かないように縛られているところ。  興奮どころか、普段なら見たいとも思わないようなシチュエーションだ。
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