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 普段は高級なスーツを身に纏い、独特のオーラを放ちながら多くの契約を決める敏腕営業マン。  有名企業のイケメンエリートという表向きの顔とは全く違う、目の前に居る『犬』の姿に、思わず頬が緩む。 (凝り固まったプライドなんて。小さなキッカケさえあれば、簡単に崩れていくものよね)  マットに片方の頬をつけるような格好で倒れ込む男の尻は、未だに高々と持ちあげられている。  その中央に大きくポッカリと広がった穴が、その奥にある秘境の地に、確かに足を踏み込まれたのだと主張しているのを見て彼女はほくそ笑んだ。 「本日のお時間、終了~」  口笛でも吹きそうな程の軽やかな声を出せば、ピクリと肩を震わす男。 「え……ま、まだ……まだ、ぼく……」  掠れた声を出しながら、必死に首を後方へ捻ろうとする彼の背に向かって、無情な台詞が放たれる。 「お利口さんなワンコは、お預けくらい覚えなきゃね?」  情事が終わり、己の欲を吐き出したゴムを男が素早く外すように、彼女は手慣れた仕草で薄いゴム手袋を外し、ゴミ箱へ軽く投げ捨てた。  肘まで巻くっていた袖を元に戻し、大して乱れてもいない服装を直すと、『今日はもう飽きちゃった』という気持ちはおくびにも出さず、未だマットの上で横たわる男の顔の近くまで行き、腰を屈めた。 「ちゃんと、マテぐらい出来るでしょう? イイコにしてたらご褒美をあげるから」  潤んだ目で自分を見上げる彼の頬をしなやかな指先で撫でると、男の返事も聞かぬまま、その場を後にした。
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