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「だってレイは特別だから」
そう言われた瞬間繋いでいた手を軽く引くとリリはポスンと俺の胸に収まった。艶やかな黒髪からは甘い香りがする。
フワリと漂うこの香りはヴァニラ。スイーツでは馴染みの香料のはずなのに。
こんな近くにいたら間違いなくリリを食いそう。いろんな意味で。
「このままずっとこうしてたいけど」
いくら特別と言われたからといっても食ったらさすがにまずい。
髪から時折覗くリリの耳は朱に染まってるし、手も熱を持ってるし、おいしそうだけど。
「甘いの食いに行こ」
小さく息を吐いたリリは何を言われるのだろうと身構えてたんだろう。一歩下がってうつむくリリをのぞき込む。
瞬きしてるリリ。特別に対しての言葉がアレだからの反応だろうけど。
今日はいいんだよ。リリからの許可が欲しかっただけだし。
勢いとかも時には必要だけど。
なにより、気持ちを伝えることが一番大事だから
「今日は近いとこね、時間あんまないし」
「え?あ、うん」
「だから今度の休みの日には、どこ行きたいかあとでゆっくり考えといて」
当たり前のように次の約束できる事。
繋いだ手を小さく握り返してくれる事。
今日はそれだけでも十分特別。
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