86人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
持っていたスマホがふるえて、慌てて画面を見ながら前に向き直る。
だけど受信したメッセージは待っていたリリではなく、「ソーヤ……」
【次の試作いつ?】
って、今月も?一緒に作るつもりか?
先月はたまたまスーパーで会ったからうちに呼んだけど、てか懐かれた?
いやいや、それはないな。
純粋に作りたい、のかもしれないけど。
どうしたものか。
画面を見つめたままでいるとバックライトが消えて暗くなった画面に映り込んだのは琉成の横顔。
さっきまではスマホ片手に悠哉とやりとりしてたはずなのに、窓の方を向いて座ってる。
気になって後ろを向くと「何?」と軽く睨み気味で聞かれた。
「や、あーメニュー決まったかなと思って」
とっさに口から出たのはそんな言葉。
俺より断然琉成の方が蒼哉とはなしてるはずだけど、なんでか蒼哉のことを言い出せなかった。
「考えとくよ、それより雨。」
梅雨入りしてからというもの降り続いてる雨に今更話題があるはずもなく「ん?」と首を傾げる。
「もう咲くんじゃないの?アジサイ」
琉成の心配してたのは雨、じゃなくてそれを栄養にすくすく育つアジサイのほうだった。
最初のコメントを投稿しよう!