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近くで仕事をしていた蒼哉の父親の仕事が早く終わったらしく、さっき蒼哉は帰っていった。残るは咲良ちゃんとリリ。
……そろそろ着くはずの悠哉を俺は待ってるんだけど。
「おせぇ」
「えっと、ご両親戻ってくるの?」
小声で言ったつもりが大分大きかったらしい。俺の声を拾った咲良ちゃんがそう聞いてきた。もちろん、親なんて夜まで戻ってこない。今日はじいちゃん知り合いの予約が入ってるとかで「めんどくせぇ」とオヤジが昨日の夜ぼやいてたし。
「ユーヤをね、待ってる」
「え?ユーヤくん?今日ここに来る予定だったの?」
「ユーヤ?へ?なんで?」
咲良ちゃんとリリ同時に聞かれて。……だからめんどくせぇって。
「……さっき、たまたまメッセ入って近くにいるっていうから」
「用事あるとしか聞いてなかったけど、近くだったんだ……」
リリがちょっと不満そう。
俺も場所聞いたのさっきだし。今日ここに来ないと決めたのも悠哉だ。
来ないことで良い効果があったのかどうかは謎。
ピンポーン
エントランスからの呼び出し音。
たぶん悠哉だろう。
立ち上がってモニターに向かって「ユーヤ、エスプレッソ飲む?」と聞いたら「もちろん」と答えが返ってきた。
そんなわけでロックを解除しエスプレッソマシンをセットした。
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