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うなだれてると、クスクスと控えめに笑う声が聞こえた。
それがリリのものだということは見なくてもわかる。だけど、久しぶりに聞くリリのその笑顔が見たくて
「そこ笑ってないで、一緒に考えてよ」
ちょっと拗ねたように言えばリリは笑うのをやめ、「スイーツ同好会第一回に相応しいお題だね」と柔らかな顔のままで言った。
やっといつものリリに戻ってくれたようで俺はホッとする。
うん、リリはそうじゃないと。
笑顔が一番似合うんだから。
「ユーヤ、コーヒー淹れて。リリは紅茶を。リューセーはお皿の準備」
俺は嬉しくなって、みんなに指示をする、そして咲良ちゃんにケーキを切りわけてもらう間に生クリームの準備をした。
幼馴染ってのはこういう時に便利だ。それぞれの好みも知ってるからいちいち説明しなくてもくみ取って動いてくれる。
家について30分もしないうちにすべての準備が整った。
テーブルに並んだのはシフォンケーキと飲み物。
さてマキ師匠のお祝いケーキに合うのはどんなソースなのか。
まずはそのまま食べて、次に定番の生クリームだろ、と頭の中で考えてるうちに
「うっわー、なにこれすげー」
すでに琉成の口の中、いやもうそこは胃の中だろう。
一口が大きいとか、飲み込んだだろうとか、言いたいことはたくさんあるけど
「リューセーくん、有名レストランのパティシエさんのケーキなんだからっもっと味わって!」
声を上げたのは咲良ちゃんで。
琉成にそんなこと言っても。馬の耳に念仏、猫に小判、要するに無駄ってもんだ。
「いや、サクラちゃん。リューセーのうまいが一番正直な感想だよ。まずそこが出発点だからあとは舌の肥えてるユーヤ。スイーツ好きのサクラちゃんやリリの意見が大事なんだよね」
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