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今日は高等部の入学式。
道路挟んだ向こう側の敷地にあるエスカレーター式の高等部だから不安はない。
どちらかと言えば、期待の方が大きい。
それというのも―――
「レイト、おはよう」
声をかけてきたのは一学年上の幼馴染、堂地悠哉(ドウチユウヤ)
栗色の髪に整った顔立ち。今年度から生徒会役員らしいが最近かけはじめたシルバーフレームの眼鏡がよく似合う美男子。
その横にいるのは双子の妹、梨莉(リリ)もちろん同じく一学年上の幼馴染。
リリは綺麗な黒髪を耳をかけ、少し考えるような仕草をした後、「あれ?電車一緒だった?」と聞いてきた。
なわけない。確かに一緒にいるときは遠回りで同じ路線に乗るけど。
朝だし。仕方なく、ここ(改札)で待ち伏せ。
そう、入学式だというのに。
同じ学園に通えるのが嬉しくて、ちょっとしたストーカー行為。
「いや、違うけど」
俺のその解答にリリは疑問に思わなかったのか、特に返しはない。
「今日は朔也おじさんたち来るの?」
もっぱら気になるのは両親の事らしい。
「母親だけね。とりあえず仕事しろって言っておいた」
エスカレーター式の高等部の入学式にいまさら両親揃ってくることもない。
しかも店休むとかありえない。
両親は自由が丘でレストランをしている。父親はオーナーシェフで母親がソムリエ。
ソムリエがいなくても営業できるけど、シェフは無理。
ほんとは二人とも来なくてもいいぐらいだけど。
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