雨降りの入学式

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口角が少し上がっている悠哉を軽く睨みつけ「またあとで」と冷静を取り戻して言う。 とりあえず。 今は、これでいいか。 これからは同じ敷地内にいるんだから、時間はたっぷりある、はず。 いくら今まで待ったからと言って初日からがっつくとかないわ。 そう自分を戒めて昇降口に向かう。 当然だけど、周りはいつもと同じ見慣れた顔。 しかも、 「レイト、また一年よろしくねー」 って、クラス割ちゃんと見てなかったけど、まさかの琉成と一緒なのか? 木村琉成(キムラリュウセイ)とは小等部からずっと一緒。ココ高等部の生徒会長の弟で 「できればよろしくしたくないけど?」 「ほんと、レイトって──」 そう言って抱き着いてきたからその体をグイグイ押し返し、 「俺はダイスキじゃないからな?」 と大げさにため息一つついて冷たく言い放った。 たぶん同学年で心許せるのって琉成ぐらい。 だからどんなきつい言葉も琉成には言えてしまう。 俺の中では愛情表現のつもり。 いつも琉成は周りをうまく丸め込んで自分の中に取り込む。 見た目の良さもあるけど人あたりもいい。 自分の容姿をわかった上で最大限に利用して生きてる人種だ。 両親のいいとこ取りでうまくミックスされた例だろう。 それでも憎めないのは記憶のない頃からの幼馴染ってヤツだからだ。
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