いいこ あのこ

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いいこ あのこ

悪い子は叩かれるのだと、随分前に知った。赤くなった頬が熱を持ちじんじんと痛みを訴えるのをつめたい机に押し付ける。 今日の夕飯は貰えないらしい。ぐうと情けない音を立てた腹に酷く苛立ちを覚えた。 「お姉ちゃん」 囁くような声が耳に飛び込んできて、思わず身体を強ばらせる。 「お姉ちゃん。大丈夫?」 あのこの声だ。可愛らしいあのこの、鈴のような声。ぼんやりとした視界の中に、綺麗な顔をした彼女の顔が揺れる。 「大丈夫だよ。全然、大丈夫」 零れた声は思った以上に掠れていた。かさかさの唇を無理矢理歪めたけれど、きっと酷い顔になっているのだろう。 身体は動きそうになかった。動く気力もなかった。目の前の顔が少し困ったように歪んで、けれども何も言わずに去っていく。 大丈夫じゃないよ。全然、大丈夫じゃない。 向こうの方から美味しそうな香りが漂ってきて、鼻腔をくすぐった。ハンバーグ?やった!あのこのはしゃぐ声が聞こえる。
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