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いいこ、いいこ。あのこは可愛らしくて、なんでもできる、あのひとのいいこ。
わるいこ、わるいこ。私は可愛くなくて、なにもできない、あのひとのわるいこ。
私は悪い子だから、叩かれるのだ。悪い子だから、ご飯を貰えないのだ。悪い子だから、いないみたいに扱われるのだ。
――ねえ、本当に?
こころの中に居る悪い虫があざとく首をかしげて囁いた。
「そうだよ。だって悪い子だもの」
何度も何度も聞いた問いかけに、いつものように私は答える。けれども悪い虫は、妙にしつこかった。
――あなたを悪い子にしているのは誰だろうね。
「うるさい、うるさい」
掻き消すように頭を振る。ざざ、ざー、雑音と一緒に囁き声はぴたりと止んだ。
ほっと安堵の息を吐くと、つけっぱなしのテレビがニュースを流し始める。
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