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拡声器を通じたイバンの声に、手を振って答えるドルージ。それを見たイバンは、槓桿から親指を離して機体頭部を前方に戻し、今度は座席左の横に倒れた槓桿を引き上げる。それと同時に駆動音が響き、受像器の風景が上昇した。バイソールが立ち上がったのだ。
イバンは、出発の前に再びバイソールの首を動かし、足下近くで見送るプロイに目を向ける。
「辛いだろうが、もう少し耐えてくれ。近いうち、皆が少しでも休暇を取れるようにしてみよう……」
「ありがとうございます!」
その心遣いに、大きく頭を下げて礼を述べるプロイを見たイバンは、
「……本当に、どうにかしなきゃ、行かんな」
と、呟きつつ、バイソールの首を定位置に戻す。
その瞬間、大人に混ざり、懸命な態度で修理に励むナランの顔が写り込む。
「子供まで、働かせているんだ……私たちがそれに応えなければ……」
「汽罐圧力正常、焔玉機関出力安定……前席、発進よろし」
「……全隊、前へ!」
号令と共に、イバンは右側二つの接続槓桿を[巡航][歩行]に入れ、その直後、足下にある三つの踏板のうち右側を軽く踏み込む。その操作にわずかに遅れてバイソールはゆっくりと、一歩ずつ、地響きを立てながら、重々しく前身を開始した。
その後ろから、短槍を装備したリストール二騎と、騎兵五騎が追随する。
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