ウーゴ砦

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 そんな中、当然ながらウライバも出兵の要請を受けた。ウライバ藩王レイは、すぐさま派兵を決定、虎の子の大型飛空船二隻にウライバ全軍の半数近くに及ぶ戦力――鉄甲騎を十二騎、装甲騎馬五十騎を含めた兵二百五十人を乗せ、王自らクメーラへと出陣した。本来であれば、有事の際の備えとして、大型飛空船の内、一隻は国内に留めておくのが通例であるため、これはかなりの異例と云える。  目的は、クメーラ王国支援のためである。名目でもなければ、建前でもない。まして、偽りでも謀りでもなかった。  これは六十三年前――西方暦七四五年、クメーラ王国危機の際、先々代の藩王がクメーラ国の王太子を匿い、立て籠もった経緯から、彼の国のウライバに対する信頼は篤く、藩王国としては、対等同盟国並みとも云える破格の待遇を受けていることもあり、それに応えるものではある。  また同時に、謀反を起こした辺境伯による藩王国の扱いに不満があったことに他ならない。もし彼の辺境伯が政権を取れば、全ての藩王国がクメーラに吸収され、独立が保てなくなるばかりか、属国以下の扱いを受けることは必至であった。  ともかく、ウライバ軍は出陣した。上空を通り過ぎる二隻の大型飛空船をウーゴの人々が驚愕の眼差しで見送ったのは、まだ記憶に新しい。  そして藩王率いる軍団は、いまだ帰還していない。  そんなとき、ウーゴ周辺でも事件が起きた。     
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