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これまで散発的だった〈武装兇賊団ゼットス一党〉の活動が、ここに来て急に活発化したのだ。おそらく、出兵したことでウライバおよびウーゴ砦守備隊の兵力が減少したと踏んだのだろう。奴らはこれまでも、街道を通る隊商、近隣の街や村を襲撃し、そのたびにイバン大隊長率いる守備隊と争い、追い払われてきたが、今回はこれまでになく大胆に、そして、より大規模に活動を始めたのだ。
だがイバンは、この状況を逆に利用した。
活動が大胆になったことで油断、そして隙が生まれ、馬脚を現わし、綻びを見せた組織は脆い。
セレイによる空中からの偵察で拠点を突き止めたイバンは、半ば危険とも言える、守備隊全軍投入による強襲を敢行した。
そして、強襲は成功した。
激戦の末、脚甲騎二騎が損傷したものの、賊の脚甲騎を全滅させ、敵戦力の半数を壊滅に追い込んだのである。
岩山の影に隠されたその場所が、本当に兇賊の本拠地であったかどうか、実のところ定かではない。だが、様々な盗品と多数の脚甲騎が隠されていた大洞窟は、連中にとっては重要な拠点であったことは間違いない。
残念ながら首領のゼットスをはじめとする組織の半数は取り逃がしたが、暫く鳴りを潜めるだろう。あとは、藩王の帰還を待ち、改めて討伐隊を編成すればよい。
少なくとも、兵を休ませることは出来る。
そのはずだった。
クメーラ王国の使者が、新たな危機を知らせてきたのだ。
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