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出発の準備を整えたイバン隊の頭上を、一瞬、影が過ぎった。報告書を携えたセレイが執務室の窓から飛び立ったのだ。
翼を広げた少女は、一度空中で輪を描くように旋回しつつ上昇、その後、東の空へと飛び去った。
「セレイが帰ってきたら、上空偵察をしてもらうか……」
――シディカは反対するだろうが……
そんなことを考えながら、イバンは膝立ちの姿勢で駐機するバイソールによじ登る。
「件の将軍は、南方防衛の要塞指令と聞き及んでいますが……」
自機に乗り込み、「ほいメシ」と昼食入り鞄を手渡してきたイバンに、それを「どうも」と受け取り、後席の脇に置きつつ、機関士ヘルヘイが尋ねる。
「自分に手が回ることを予想していた将軍は、旗本衆を予め郊外に逃がし、闇夜に紛れて飛空船で逃げたとか……ただ、大国の将軍という地位あるのであれば、要塞に籠城して抵抗することも出来たでしょうに……」
操縦室に腰を下ろし、固定具を付けたイバンは、半分呆れ顔で答える。
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