224人が本棚に入れています
本棚に追加
「逆を云えば、発見が困難になったとも云えるな……この街道沿いには山が多い。飛空船を隠すにしろ、乗り捨てて逃走するにしても、隠れる場所に困ることはない。だが、鉄甲騎が七騎に騎馬の部隊となると、動き出しさえすればそう簡単に隠せるものじゃない。昼間であれば、空中からセレイの目で見つけることも可能かもしれん」
そう言ってイバンは座席の右にある槓桿のひとつを引き、バイソール胸部の搭乗扉を閉じる。それと同時に、操縦士の前面に降りてきた受像器に、鉄甲騎の[目]である撮像器から入る情景が映し出される。
受像器の両脇には操縦桿が取り付けられており、それぞれの先端には、大小二つの引き金のようなものを含め、複数の釦(ボタン)と、小さな槓桿が長短ふたつ取り付けられている。イバンが右操縦桿先端の短槓桿を親指で左に倒すと、受像器の映像が左に旋回する。バイソールの頭部が左を向いたのだ。
バイソールの撮像器は、開きっぱなしの格納庫を受像器へと映し出しており、その中では現在、前回の戦闘で損傷を受けていたリストールの修理が急ピッチで進められていた。それぞれ機体の足場には、待機組の操縦士と機関士、整備士を兼ねた予備機関士、そしてナランとドルージを加えた計二十四名が作業に当たっていた。
「そっちは任せましたよ、ドルージ殿……」
「今日中には修理してやるよ!」
最初のコメントを投稿しよう!