兇賊と将軍

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「だが、それも再起のためだ……吾輩はこんなところで終わる男ではないのであるっ!」  存外澄んだ声で激高し、喉を涸らしたドルトフは、思わず拳を座卓に叩きつける。 「……でなければ、吾輩を逃すために犠牲となった部下どもへの示しが付かぬではないか!?」  ドルトフは要塞より脱出する際、鉄甲騎二騎と騎馬十余騎――自軍の約四分の一を失っていた。その殿を務めたものが、自ら志願したものなのか、あるいは命ぜられたものなのかは後の研究者の中でも意見は分かれている。  この時、将軍の飛空船も噴進兵器により対空攻撃を受け、機関部に損傷を受けたものの辛うじて逃走、某所で応急修理を施した後、[ある者]の導きでこのゼットスという兇賊に巡り会ったのであるが、詳しい経緯は別の項にて語るとしよう。  自分の境遇への苛立ちを拳に乗せる将軍に、ゼットスは少々呆れ気味である。 「座卓を壊さないでくれよ? また盗ってくるのは骨なんだからな……まぁ、俺さんはあんたさんの持ち逃げした戦力が目当てで、あんたさんは俺さんの地の利を当てにしている……お互い、足りないものを補い合って、幸せになればいいじゃないか、ぇえ?  ま、一番気になるのは利益配分だが、その前に……」     
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