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ゼットスは、ドルトフの正面に片膝を立てて座り、炉に掛けられた把手付きの細長い瓢箪のような、真鍮製の薬罐を手に取ると、将軍の前に置かれた器に向ける。丸い胴の下部より突き出た、鶴の首のように長い注ぎ口から黄金色の液体が、湯気を立てて器に落ちる。
「……茶は、いい。心が落ち着くからな」
ゼットスは自分の器にも茶を注ぎ、口元に近づけて香りを堪能しつつ、話を続ける。
「その利益配分だが、あんたさんが砦を掌握した暁にゃあ、当面は少しばかり乱取りをお目こぼししてくれりゃあいい。そんでもって、ウライバ全土を手にしたら、その利権から恩返しをしてくれりゃあいいさね……」
そう言って茶を啜り、感嘆の息を吐くゼットスを見てからドルトフは、自分も茶に口を付ける。
「……支配権を半分よこせ、とかではないのであるか……欲があるのか無いのか、わからない男であるな、貴殿は……」
「そういうのは面倒なだけだよ、俺さんは……」
それが本心かどうか、信用ならない
肩をすくめておどけるゼットスに油断無く視線を向ける将軍は、
「あまり派手にやり過ぎるな。交易都市から人がいなくなったら、その利権が減るのであるからな……」
と、釘を刺しつつ了承する。所詮、口約束だが。
「しかし、まっこと良い茶葉である。盗賊にしては趣味がよい……これは、東はウイゲレの……鳳凰茶であるか!?」
改めて茶を褒めるドルトフに、ゼットスが再び話しかける。
「流石はクメーラのお貴族さん、わかってらっしゃる……
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