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叫んだことで再び喉が渇いたドルトフは、今度は不用心に、注がれた茶にさっそく口を付ける。若干濃いめではあるが、すっきりとした味わいは、荒れた心を不思議と落ち着かせてくれる。
ドルトフにとって、ゼットスが薦めた茶が、クメーラでも親しまれている茶葉と煎れ方であったことが幸いした。もし、この地方で時折見られるバター茶であったなら、彼は決して口にしないだろう。強いて不満を言うなれば、茶に入れる砂糖と、この場に何の茶菓子もないことくらいであろうか。
「それよりも、貴殿の方はどうなのだ。一騎とはいえ貴重な鉄甲騎を、その中でも一番の手練を貸し与えたのであるぞ!」
とりあえず落ち着いたとはいえ、やや怒気を含んだ将軍の責めるような言い回しに辟易しながらも、ゼットスは自信たっぷりな表情で茶をすする。
「……あんたさんの鉄甲騎に加え、俺さんの温存していた脚甲騎二騎でイバンの野郎さんを足止めすれば、砦の守備は六機に減る。そこに、俺さんの[切り札]さんでウーゴの街を後ろから襲いかかり、最後は俺さんとあんたさんで総攻撃、挟み撃ちって訳よ……」
「それである……ウーゴの砦は、貴殿の地の利を持ってしても侵入口は無いと言っていたではないか?……」
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