兇賊と将軍

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 ドルトフの言うとおり、ウライバへの入り口は、ウーゴの街を除き、深い森林と岩山の連立する峡谷に囲まれ、鉄甲騎はおろか、兇賊の足、更には彼等しか知らぬ間道、抜け道を以てしても走破は困難で、また、飛空船を用いても、構造上、高々度飛行が不可能であるため、ツバサビトでもなければ突破は不可能と言われており、それ故、この国は建国以来六百年もの間、望まぬ半鎖国状態を続けているのだ。 「その歴史も、今日で終わりよ……俺さんの[切り札]さんがウーゴの砦を落とし、あんたさんの[奥の手]さんがウライバへの道を手引きする……  それで俺さんは、晴れて砦の奴らさんに仕返しができ、あんたさんは、めでたく独立国家の王様さんになれるってぇ寸法だ……  くくく……ふははは……!!」  高笑いするゼットスに、呆れたような表情を浮かべているドルトフ……  薬罐を乗せた小さな炉に、赤く熱した焔石の光が輝いていた。
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