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「大隊長、お茶が沸きました」
「お、すまん……」
街道外れの森――
焔石が輝く携帯用の炉から降ろされた小さな薬罐、そこから器に注がれた濃茶を受け取ったイバンが、膝立ちの姿勢で駐機するバイソールの足下から見上げていたものは、林の中に墜落した、全長八十メートルを超す大型双胴飛空船の残骸だった。
付近の狩人やホド住民より得られた様々な目撃情報から、この位置を割り出し、先刻、発見したばかりである。
発掘された前文明技術の中で不可解にして貴重、そして高価な〈飛翔装置〉を用いて浮上し、回転羽根にて推進力を得る飛行機械……それが〈飛空船〉である。その動力は、やはり焔玉機関であり、それを動力とした大型発電機で生み出された電力により、必要なすべての機構を駆動させている。
現在用いられているのは例外なく軍事用で、主に兵員輸送、特に鉄甲騎などの輸送、前線への展開に貢献している。反面、その構造は、強靱な骨格を持ちながらも、軽量化のために薄い鋼板で覆われており、故に船そのものを戦闘に用いることは出来ない。
大抵は、方舟型をしており、墜落している双胴型は、珍しいと云える。
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