兇賊と将軍

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 現在の飛空船は、飛翔装置の性能が前文明時代より低下しているため、低空を飛ぶことしかできない。故に、飛行機と云うよりは、地上を走る船と言った方が正しいとも云える。 「紋章の照合確認……間違いなく、手配にあったドルトフ将軍の乗船〈メリアンヌ号〉です。それにしても、さすがに双胴は大きい……」 「……大隊長、貨物室には、何も残されてはいません」 「飛翔装置が全て取り外されています……発電用の焔玉も残っていません」 「機関室に損傷の後が見られます。おそらく、討伐隊による攻撃でしょう。ここまで、予備の機関だけで飛行してきたことが予想されます……」 「思った通り、操舵室の魂魄回路も持ち去られていました」  探索に当たった部下の報告を聞いたイバンは、ふうむ、と考え込む。 「騎兵の報告では、地面に鉄甲騎どころか人馬の足跡もなかった……この痕跡を消す巧妙な手口……まさか、ゼットス一党による仕業か……」 「連中の生き残りが、墜落した船を襲撃して貨物と鉄甲騎を奪ったとしたら、厄介ですね……」 「いや、それにしては、争った形跡がない。消したにしても、なさ過ぎる。だいたい、兇賊が絡むなら飛空船がこんな簡単に見つかること自体、怪しいと考えるべきだ……」  捜し物というのは往々にして、見つかるときは呆気ないものである。     
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