224人が本棚に入れています
本棚に追加
二人の英雄
小さな街が炎に包まれているその光景を、遠くから目撃したものがいるとしたら、寺院の壁面に掲げられる地獄絵図よりも凄惨なものを目の当たりにしたことだろう。
大きな砂漠に程近く、街道から程よく離れ、大規模な隊商こそ通らないものの、近隣の街や村との交流でそれなりに賑わい、中央広場へと続く大通りに煉瓦造りの建物が並ぶ綺麗な街が、炎に焼かれ、瓦礫と化し、無残な姿をさらしていた。
それは悪意を込めた人為的所業であった。
陽炎のように揺らめく[影]どもが、門を破壊して侵入し、手にした武器を振り回して形振り構わず建物の戸を蹴破ると、商店の品物を蹴散らした挙げ句に、逃げ惑う人々に襲いかかる。
[影]どもは老いも若きも、男も女も関係なく、生きているもの全てを問答無用に殺していく。
それは、巷に蔓延る兇賊の類なのだろうか――それならば、ここまで殺すことも無かろう。男も女も、捕らえて売れば、一財産は稼げるはずだ。
それとも、余所の国による侵略目的だろうか――で、あれば尚更、この破壊活動に合点がいかない。何処かへの見せしめであるならば解るが、それはいったい、誰に対してのものなのかは見当も付かない。
最初のコメントを投稿しよう!