ウーゴ砦

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ウーゴ砦

   ウーゴ砦兵舎――  朝に忙しいのは、兵士だけではない。  砦各所の守備兵や格納庫などの部署に朝食を届け、その後は夜勤を終えた兵士達への食事の給仕と、プロイをはじめとする職員は忙しく働いた。  プロイは、年の頃十二歳。 機関士長ドルージの孫娘である。  三年前、隊商を営んでいた両親を旅先の流行病(はやりやまい)で亡くして以来、ドルージが引き取り、この砦で祖父とともに働いている。  砦の雑用は、プロイを含む雇い入れた職員に委託していた。無論、身辺に問題がないものを雇用している。年配の職員が多い中、長い黒髪を後ろに束ねて懸命に働くプロイは、砦のマスコットのような存在となっていた。  だが、プロイはマスコットで終わるつもりはない。  一部施設の清掃をこなし、火を起こして風呂を焚き、手回しの洗濯機を懸命に回し、そして食事の準備をする。  年配の職員に混ざり、懸命に働くプロイの心は、自分を育ててくれた祖父の役に立ちたいという想いでいっぱいだった。
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