通勤電車の奇跡

出会い

女の子は席につくと、すぐに教科書を広げて真剣に勉強を始めたので、僕も文庫本を出して読み始めたのだが、
頭の中では、

『まだ席もちらほら空いているのに、なんでわざわざこんなおじさんの隣に座ったんだろう？』

そんなことを考えて、本に集中できないまま、４０分程で地下鉄の乗り換え駅に近づく。

すると、隣の女の子も教科書を片付けはじめた。

『ここで乗り換えか・・』

女の子が先に席を立ち、混雑している人を掻き分けるように、出入口の方へ進む。

僕もすぐに席を立ち、後ろに並ぶ。
僕は身長が170cmくらいだが、この子はまだ、僕の胸くらいの背の高さだ。
まだまだ小さいのに鞄はパンパンにつまっていた。

駅に到着し、扉が開いて、皆一斉にホームに出る。