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「いやいやいや、なにかの間違いだって。どうして私が恵子の彼と抱き合う必要があるの?」
両手を左右に思い切り振り、拒否の姿勢を見せるけれど、感情が高ぶっている恵子は私の行動など理解しようとしてくれない。
それが余計、私を焦らせる。
「だってあの後ろ姿、絶対に紗南だったもん!私、しっかりと見たんだから!」
「ちょっと待ってよ!後ろ姿だったんでしょ?!顔、見てないじゃん!」
私の髪型は肩甲骨あたりまであるストレートのロングに、身長も160センチと平均だ。
そして体型も特別細いわけでもなければ、太いわけでもない。
つまり、どこにでもいる平凡な女子なんだ。
「顔、見てないけど……でも!」
キッと強い瞳を私に向ける恵子。
その瞳には憎しみだけがこもっていた。
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