暗雲

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「恵子!!」 飛び出していった恵子を追いかけるため、私も思い切り化学準備室から飛び出した。 でも、ある壁に私の勢いは邪魔されてしまう。 勢いよく飛び出したその先には、出席簿を持って歩いてきたある先生とぶつかってしまった。 「きゃぁ!」 「うわっ!!」 女子生徒の私より驚いて大きな声を出したのは、私や恵子のクラス、2-Aの担任の都築先生だ。 お互いに尻餅をついたから廊下にはそれは激しい音が響いた。 お尻から腰付近まで強い痛みを感じるけれど、今は恵子を追いかけるという思いの方が強く、私はすぐに立ち上がる。 「や、弥生さんじゃないですか。大丈夫ですか?どうしてこんなところに……」 都築先生は弱弱しい声を出しながら、腰をさすって立ち上がる。 淡い茶色の前髪の間から見える瞳からは心配そうな色が見えた。
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