籠の鳥

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私がここへ来たのは、まだ歳が一桁だったころ。 ねえさんたちの、部屋の掃除や台所の仕事を手伝っていれば、白い米を食わせてもらえた。 それだけで幸せだった。 「この子はもうじきとんでもない別嬪になるよ」 私を一番可愛がってくれた、花魁が労咳で死んだ日から一年がたった。 「ゆうづき。と、申します」 「美しい名だ」 微笑んだ男は、若い侍だった。 その日から男は毎月満月が近くなると私の所へやって来た。 私は座敷持ちから、花魁と呼ばれるようになっていた。 「この頃は江戸の町も物騒でな」 「ずっとここにいたらよろしいじゃありんせんの、この大門の中は平和そのものでありんす」 男はふっとわらった。 「夕月を……この門の外へ連れていきたいもんだな」 「門の外? おかしなことを言う人でありんすね、わっちは死ぬまでこの門の内……ここから出るときは死んだも同じ」 ほほほ、と笑って見せると男は悲しげに言った。 「京に行かねばならん」 「京?」
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